制服も冬服に移行し、教室の色合いが少しだけ引き締まる10月。

 わた兄も東京に帰ったし、激動の夏からすれば平和な稔りの季節を迎える。

 ……はずだった。

「恵里ちゃん、俺と付き合ってよ」

 食欲の秋。

 文化の秋。

 そして、予想外の秋。

 私はこの時になって、人生第一回目のモテ期を迎えていたのだ。

 学校の人に告白されるのは、今月に入って3人目。

 考えてみれば予兆は二学期に始まった時から出ていたような気もする。

 急に話すようになったり、携帯聞かれたり。

「ごめんね。彼氏いるから」

 北高の軽い恋愛哲学の上でも、やっぱり断るのには精神力を使う。

 今まで同じ学校の人に告白なんてされたことなかったのに、なぜ?