「確かに朝子と恵里じゃレベルが違うよ」

 歩の言葉の意味が掴めず、彼女と目が合った。

「だったら……」

「俺、こいつに十年以上片思いしてたんだから。朝子とはちょっと次元が違うの。ごめんな」

 ちょっと前まであんなに強気だった彼女の目に、涙が滲む。

 敵のはずなのに、私の心までチクリと痛んだ。

「じゃ、また明日学校で」

 彼女にそう言って、歩は私に肘を突き出す。

 橘さんの前だから少しためらったが、私だってこの子に十分傷つけられたんだからと思い直して腕を組んだ。

 バス停に向かって歩き出す。

 それ以上あの子が何か言ってくることはなかった。



 バス停には誰もいなかった。

 時刻表を見ると、つい5分前に出てしまったらしい。

 二人でベンチに座ると話すことも思いつかず、ちょっと気まずくなった。

 残暑の照り返しに目をしかめると、スルッと歩の手が私の手に絡む。