言っていることはわかる。

 似合わないのもわかる。

 でもそんなの関係ないじゃない。

 ここまで言われて黙っちゃいられない。

「あの、あたし、クレーム聞きに来たんじゃないんですけど」

 嫌みっぽくそう言うと、ああそうだったと本筋に戻ってきた。

 そして腕を組み、不敵な笑みを浮かべる。

「私と歩、何もなかったわけじゃないわよ」

 え……?

「おい! 朝子」

 慌てて歩が遮る。

 何もなかったわけじゃないって、確かにそう聞こえた。

 参ったかとでも言わんばかりにふんぞり返る橘さんが、怖い。

「どういうこと?」

 歩に問いかけると、観念したように首の後ろを掻く。

「元カノなんだ。今はもちろん何もない」

 ああ、そういうこと。

 だからお互い呼び捨てだし、何もなかったわけじゃないのか。