歩は枕を抱きしめながら大きなあくびを一発かました。

「兄貴なんだから嫌いもクソもないだろ。でも、俺の中では一番の危険人物だな」

 うそつけい!

 とツッコミを入れたくなる間抜け面でそう言った歩。

 わた兄の言うとおり、コンプレックスなんだろうか。

 危機を感じているような顔はしていないけれど。

 心配なんて、いらないよ。

 という意味を込めて、私もベッドに乗り汗ばむ歩をぎゅっと抱きしめた。

 気持ちがちゃんと伝わるように。

 自身を持ってもらえるように。

「恵里、暑い」

「うるさい。我慢してよ」

 ……やっぱり余裕ぶっこいてるようにしか見えないけれど。