制服姿の歩の第一声。

「男の匂いがする」

 思いっきり嫌な顔ををしていた。

 男の匂いって、わた兄の匂いってこと?

「はぁ?」

 別にバレて困るわけではないけど、そういう言われ方するとドキリとする。

「なんてね。兄貴が来てたんだろ」

 くっ。

 勝ち誇ったような顔がムカつく。

 でも顔はすごく嫌そうな顔。

「そうよ。ちょっと前までいたの」

 あっそ、と言いながらベッドにダイブする歩。

 今回は何もされなかった? とは聞かないらしい。

 もっと危機感を持てよ。

 何かされたわけではないけれど。

「歩、わた兄のこと嫌いなの?」

「は?」

「だって、わた兄が帰ってきてからずっと怖い顔してるし」