7月10日、午前2時過ぎ。

 この日は彼、西山歩の誕生日。

 みんなが寝静まった中、私たちの儀式はひたすら静かに行われた。

 私、桐原恵里の部屋にて。



「歩……」

 声を出そうものなら、一旦唇で口を塞がれ、低くて甘い声で咎められる。

「おばさんたちが起きるだろ」

 それさえも体の芯を刺激する道具のよう。

 必死で声を殺す。

 口には出さず、心で何度も叫んだ。

「大好き」

 素直になれた夜、時間はゆったりと甘く静かに流れていった――。