ビクトールは窓に近寄ると、大きくあけはなった。

入ってきた風に、白く清潔そうなカーテンがゆれる。

空の青さが目に痛い。
まるであの日のようだ。

軽く咳払いをして、ビクトールは切り出した。


「それで、だ」


背中越しに投げかけた問いに、どんな答えが返ってこようとも受け入れるつもりはある。


「戻ってくる気はあるか?
無理にとは言わん。

地上で暮らすというのなら、場所は用意してある。

クーフで暮らしたいというのなら、何かおまえにできる仕事を見つけるさ」

「あたしは……」


包帯越しに聞こえるダナの声。


「あたしは、戻りたい、です」


小さな声。
違う、戻りたいだけではない。

その裏にあるものをビクトールは直感した。


「まだ、飛びたいか?」


肩越しに振り向いて、単純な言葉で問いかけた。

ダナはうつむいた。

シーツを握りしめた手に力が入る。

関節が白くなるのを見ながら、ビクトールはたたみかけた。