どうして僕が二人を苦しめるようなことをしたのか。

それは、悠斗には一度絶望を与えなくてはいけなかったからなんだよ。
その上で、悠斗がそれに打ち克ったときはじめて万古は解放される。

これを言ったら悠斗は苦しむかもしれない。だけど、知ってて欲しいことがある。

悠斗と僕は本当は二人で一人だったんだよ。
悠斗が産まれたから僕が生まれた。僕が産まれたから悠斗が生まれた。

説明するのが難しいけど、万古の力を解放するには僕という存在が必要だったのさ。
僕の力を吸収することで、万古解放は完成される。

僕は、もうこれで自分の役割を果たした。
だから、僕はもうおそらく生きられない。

だけど、悲しまないで欲しい。
僕は、悠斗の力になれて本当に嬉しいんだ。

僕の体は消えてしまうけど、僕の存在はずっと悠斗の中で生き続ける。
これからは、ずっと悠斗の器として一緒にいられる。
だから、悠斗は笑って僕の分まで生きて欲しい。

僕は心から二人の幸せを願っているよ。
それだけはどうか信じて欲しい。

もう、時間がない。
最後に一つだけ、わがままなお願いを聞いてくれないか。

悠斗のことを親友だと思っている僕のことを許して欲しい。


匠』



~エピローグ 完~

~幸運の器 完~