悠斗は真っ先に匠を探した。

悠斗の頭の中には、いつかの華音の傷ついてボロボロになった姿が映し出されていた。

あの時のことを考えれば、今回の力の暴走によって匠が瀕死の重症を負っていることが考えられる。

しかし、意外なことに匠は全くの無傷で元の場所に佇んでいた。

「悠斗」

匠の顔にはいつもの穏やかな笑顔が浮かんでいる。

「匠、お前、無事、だったのか?」

「ああ、僕は大丈夫だ。それより、悠斗。早く葵ちゃんの所にいってやれ。今のお前なら葵ちゃんを救うことができるはずだ」

「どういう、ことだ?」

「お前は覚醒したのさ。万古の真の力が解き放たれた。やっぱり、悠斗はすごいや」

そう言って匠は子供のように目を輝かせて笑った。

「何のことを言ってるんだ?」

「言葉より、試してみればいい。早く、葵ちゃんの所にいってやりな。そうすればわかるから」

悠斗には、匠の真意がわからなかった。

ただ、今の匠の言葉は信じられる気がする。

そう思ったらいても立ってもいられなくなり気づくと走り出していた。


「わかった。でも、匠。お前とは戻ってから色々話したいことあるからな。すぐに戻ってくるから、絶対ここで待ってろよ!」

悠斗はそれだけ言い残すと、葵の元へと向かった。