悠斗の頭の中は真っ白になっていた。

何も考えられない。

思考が完全に止まってしまっている。

「おい、悠斗!聞いてるのか?」

匠の言葉に、再び思考が動き出す。

「あ…あぁ。どういう…ことだ?」

声をどうにか絞り出すようにして尋ねた。

「悠斗、落ち着いて聞けよ。実は、さっき悠斗の家の近くまで行ったんだ。単に暇だったから悠斗誘ってどこかに行こうかと考えたからなんだけど――そうしたら悠斗の家の前に葵ちゃんがいて……」

「えっ、オレの家の前?」

「ああ。それで声をかけようと思った時、いきなり黒塗りの高級車が来て葵ちゃんを無理やり乗せて連れ去ったんだよ!」