すっかり日が暮れて、街頭の明かりがつき始めても何の変化も現れない。

いくらなんでも、時間がかかりすぎている。

もう一度確かめるために、マンションに入ろうとしたその時悠斗の携帯が鳴った。

ディスプレイを見ると、匠からだった。

今は、葵以外と話す余裕はないと感じていた悠斗は、携帯に出るのをためらった。

しかし、携帯はそれでもしつこく鳴り続ける。

何か不吉なものを感じ悠斗は、気づくと携帯の通話ボタンを押していた。

「悠斗!!!」

そこから聞こえてきたのは、匠の切羽詰ったような声だった。

「匠?――どうしたんだ?」

「葵ちゃんがさらわれた!!」


~ひと時の逢瀬 完~