ガタッと音がして、小出が立ち上がる。

 それと入れ違いで私は席に座った。

 渡さなきゃ。

 チョコ、渡さなきゃ。

 自分に言い聞かせるように、チョコを収めたバッグを握りしめる。

「お前さぁ」

 私が言葉を発する前に、あいつの方が声をかけてきた。

 近くで声がしたと思ったら、私の隣の机にあぐらをかいて座ろうとしている。

「呼び出されてたろ。今度は何しでかしたんだよ?」

 隣の席が、ものすごく近く感じる。

 こう近くちゃまともに顔も見れないほど、あたしはこいつが好きらしい。

「別に……ただのケンカよ」

「またかよ。色気のない女」

 バカ、また傷ついたじゃん。

 そんなこと言われたら渡しにくくなる。

「サボる部長に言われたくないし」