スカーレット


 わけのわからない涙のせいで、彼女がノックをしたことにも気付かなかった。

 そんな私を見て、彼女は驚いたような、怒ったような顔をした。

「ちょっと、お父さん?」

「私はまだ何も……」

 やはり父娘だった二人のやり取り。

 私は院長をフォローしようと涙声を出す。

「すみません、何の脈絡もなく泣き出してしまって……」

 困った顔を見せた彼女は、院長の横に座った。

 やっと落ち着きを取り戻した私は、改めて二人と向き合う。

「確認したいことがあるということですが?」

「はい」

 私は一つ深呼吸をして、バッグからレポート用紙を取り出した。

「順番にお尋ねします」

 二人にも緊張の色が見て取れた。

 やっぱり、私には何かある……。