スカーレット




 おばさんによって通されたのは、応接室のようなところだった。

 こんなかしこまった場所に通されるとは……。

 緊張して手に力が入る。

 上品な湯飲みに入れられたお茶にも、暫く口を付けれなかった。

 とりあえず三宅先生が来るまで、おばさんが持ってきてくれた雑誌でも読んでいよう。

 腕を机に伸ばした時、部屋のドアが開いた。

「こんにちは」

 やってきたのは、おじさんだった。

 白衣を着ているので医者だということはすぐにわかった。

 私も立ち上がり、一礼する。

「初めまして」

 その言葉に眉を下げたおじさん医師は、ゆっくりとドアを閉めて私の前に立った。

「院長の三宅です」

 ああ、院長さんか……。

 手には何やら色々書類のようなものを持っている。

「実は、初対面ではないんですよ。まあどうぞ、お座りください」

 記憶をなくす前に対面したのだろう。

 私は素直に腰を下ろした。