スカーレット


「ここでいいです」

 また無愛想な「はい」が聞こえたが、運転手はまだドアを開けようとはしない。

「すぐバス停に着きますから、そちらで下ろしますね」

「わかりました」

 何でもいい。

 早くして。

 願いが通じたのか、その時に信号が変わった。

「1040円です」

 私は1100円を差し出して、「お釣りはいいです」と言ってタクシーを飛び降りた。

 見えたはいいが、三宅産婦人科までまだ少しある。

 それでも詰まっている車よりは幾分か速いスピードで歩いた。

 汗で服が貼り付いて気持ち悪い。

 でも、一刻も早く知りたいことがあるのだ。

 ウィーン

 自動ドアの開く時間さえ惜しい。

 駆け込むような形で三宅産婦人科に飛び込む。

 先日と同じ受付のおばさんが微笑んでくれた。