「相手の彼とは、もう音信不通よ」
奈津子も説得するように言う。
二人は道に捨てられた子猫を見るような目で私の顔を伺っている。
だんだん自分が惨めに思えてきた。
「じゃあ、最後に二つ教えて。騙されたって話、聞いたのはいつ頃?」
「7月に入ってから、よ」
「かっちゃんは妊娠と借金のこと、知ってるの?」
「さあ。新しくちゃんとした彼氏ができたなんて、あたしも聞いてなかったから」
奈津子は勝彦のことを知らなかったらしい。
堕胎からまもなく彼氏ができたなんて、不謹慎だから言えなかったのだろうか。
最後に二つ、と宣言してしまった手前、これ以上質問を投げかけることはできなかった。
「なっちゃん、家まで送るよ」
奈津子は正樹に促され、一緒に部屋を出て行ってしまった。
部屋に取り残された私は、とりあえず相手の男のヒントを探そうとした。



