夜、この日も勝彦がご飯を作ってくれた。
仕事で疲れているはずなのに、申し訳ないという気持ちが生まれる。
「ねえ、ご飯くらい、たぶんあたしも作れるよ」
包丁を握る彼の隣で洗い物を手伝いながら言うと、彼はクスッと笑った。
「料理は苦手だって言ってた気がするけど?」
「今ならできるかもしれないじゃん」
そういえば火を使わせるのは怖いと言っていた。
ガス事故だったらしいし、気づかってくれているのはわかる。
だけど、そうそうガスなんて漏れないだろうし……。
ガスはどうして漏れたんだろう。
私の中に、疑問がまた一つ生まれる。
次から次へと……。
きっと謎はまだ増えるだろう。
記憶が戻らない限り、増え続ける。
調味料を混ぜていた器を洗い終えて、キュッと水を止めた。
「ありがとう紀子。テレビでも見ながらゆっくりしてて」



