スカーレット


 想定外だった内容に、一瞬頭が真っ白になった。

 私の体に、そんなことが起こっていたなんて……。

「あなたはもともとホルモンバランスが良くありませんでしたので、術後にピルを処方していました」

 ホルモンバランス?

 いやいや、問題はそこじゃない。

「あの、相手の男性って……?」

「え? ああ。申し訳ないですが、現場を見たわけではないので、正確な相手はわかりかねます」

 そりゃそうだ。

 他人に相手なんてわかるわけがない。

 堕胎の事実がショックで、この時はこれ以上頭が回らなかった。

 ただ、そんな私にもわかることが一つ。

 相手は、勝彦ではない。

 彼は付き合ってまだ一月くらいだと言っていた。

 8月6日に手術をしたとすれば……相手はたぶん別の男だ。

 それに、勝彦であれば、子供を堕ろすようなことをするはずがない。

 だって、あんなにも私を愛してくれている。

 私は半ば放心状態で病院を出た。