ジュリエットに愛の花束を。



『おまえ、あんまり窓に近づくなよ? 落っこちてきそうで怖い』


月だとか樹だとかを覗き込んでいたら、注意される。

別にいくらあたしだって、ここから落っこちるなんてうっかりはしないけど。


「大丈夫だよ。そこまでドジじゃないし。っていうか、ドジじゃないし」

『ドジっつぅか、慎重さにかけるんだよ、おまえは。

石橋を叩いて渡るどころか、枯れ木でできたボロボロの橋だって『大丈夫だって』なんて言いながらスタスタ渡るタイプだし。
で、落ちそうになって俺が助けんだよ』

「『橋』って名前がついてる以上、渡るためにできてるんだし、渡ったところで何も悪くないじゃん」


減らず口を叩いたところで、樹の笑みがこぼれる。


『ドロ船だって、船ってついてたけど沈んだろ。……あれ、これ何の昔話だっけなー』

「あー、沈んでたね。なんだっけ……あたし、童話とかってお姫様系しかわかんない。まぁ、気にもなんないからいいけど」

『……出た。瑞希はよくそこで問題を放置できるよな。俺なんか気になって仕方ねぇのに』

「だって気になんないもん。後でネットで解決すれば?」

『……やだ。なんか負けた気がするし』


いつもつまらない事を気にしては、一人で悶々と悩んでる樹が思い出される。

それは、不意に思い出した台詞が、どのドラマで使われていたか、とか。

アニメの声優の声が、知ってるアニメキャラの誰かと一緒だけど、誰だかわからない、とか。


ネットで検索すれば一発なのに。