「おまえ、もっと焦れよ」
「だって知ってたし。
……樹が夢中になってたから言わなかったけど」
「……言えよ。そういう事は」
少しバツが悪そうに言う樹に、面白がって続ける。
「やっぱり無理矢理っぽいのが好きなんじゃん。なに? 支配欲?」
「それさー、おまえが素直に大人しくなる事がないからそういう事になるだけだろ?
やけに大人しい時は、面食らって控えめになるだけなんじゃねぇの?」
そう言った後、時間を思い出した樹は慌ててあたしに服を着せる。
「とにかく、急いで帰らないと。
……やだなー、遅れたらお兄さんに絶対怒られるし」
「いいよ、樹はこなくて。
っていうか、樹がいた方がややこしくなるから、むしろ来ない方がいいよ。
間に合わなかったら適当にサークルの飲み会があって、とか言っておくから」
そう言ったあたしに、樹は黙って服を着せていって。
着せ終わったところで、真面目な顔を向けた。



