「彼女の、瑞希。……人見知りする奴だから、構わないでやって」
やっぱりアリサさんを嫌ってるように見える樹に紹介されて、あたしは会釈程度に頭を下げる。
「片桐瑞希です。いつも樹がお世話になってます」
「……おまえは俺の母親か」
「そうじゃないけど……一応こういうのがマナーなんじゃないの?
ああ、そっか! 目上の人と話す時には『僕』って言わなくちゃなんだっけ」
そこで樹の軽いチョップが入って、それを見ていたアリサさんがクスクス笑う。
上品な笑顔に、あたしはぼーっとその様子を眺めていた。
「可愛らしい子ね。椎名くんが入れ込んでるのも分かる気がする」
「……」
あたしがいる状況でこんな事を言われた場合、樹は絶対にそれを否定するのに。
なんでだか黙ったままそれを肯定させる樹に、あたしは疑問を抱く。
さっきから、樹の態度がおかしい。



