「わざわざありがとな」
「ううん。近くに用事あったし。
……これから出かけるの? 時間あるなら、椎名くんの部屋で彼女さんも一緒に……」
「悪いけど、これから二人で出かけるところだから」
珍しくキツく言う樹を不思議に思って、その横顔を見上げてたけど……。
黙ってしまったアリサさんも気になって、視線を移す。
全体的にはナチュラルなのに、マスカラには力を入れているように見えるメイクは、あまり不快感を与えないし、むしろ自然だと思う。
ちょっとキラキラしすぎだけど、樹が嫌うような男ウケを狙ってるような子にも見えないんだけど。
むしろ天然な「女の子」タイプだと思うんだけど。
樹のこの失礼な態度は、なんでだろ。
アリサさんはじっと樹を見た後、にこりと微笑んだ。
「じゃあ別にいいの。
……でも、彼女を紹介してくれるぐらいしてもいいんじゃない? 毎日顔合わせて仲なのに」
アリサさんの視線があたしを捕らえる。
その視線にドキリと肩を揺らすと、樹は渋々あたしを紹介した。



