嬉しくなるような台詞を言った後、忘れずにイヤミを付け足した樹に笑う。
そして、二人で樹の部屋を出る。
二階にある樹の部屋を出て、アパートの階段を下り終わったところで、前からキラキラした感じの女の子が走ってきた。
キラキラ……うん。なんか、キラキラ。
膝上20センチの黒地にスパンコールのついたワンピース。
上に羽織ったGジャンは……自分でつけたのか、色とりどりのバッジが輝いていた。
……なんか、アレみたい。マーブルチョコ。
決して趣味が悪いわけじゃない。可愛い感じにまとめられてるし、雰囲気によく合ってるし。
「椎名くん、これ。忘れたでしょ?」
あたしの倍くらいきつめのパーマをあてた女の人が、樹にタオルを手渡す。
その様子を隣から眺めていると、樹は女の人にお礼も言わずに、あたしに視線を向けた。
「瑞希、この人、マネージャーのアリサさん」
「あ、うん」
頷くと、樹は、そこでやっと『アリサさん』に向き直る。



