口を尖らせながらそう言うと、樹は「ったく……」と呟いてため息を落とす。
……まぁ、本人にしたらそんなにいい気分でもないのかな。
っていうか、松永は本当にそっちの人なのかなー……あ。あっ!
「あーっ!!」
「なんだよ、いきなりデカイ声出すなよ」
「今日、お兄ちゃんに寄り道しないで帰って来いって言われてたんだった……すっかり忘れてた」
慌てて帰る用意をしていると、立ち上がった樹が壁にかかってる車の鍵を手に取った。
「え、樹、いいよ。樹、今帰ってきたばっかりじゃん。あたし電車で帰れるし」
遠慮して言うと、樹は「らしくねぇ」と笑う。
そして、靴を履いてからあたしを振り返った。
「心配なんだよ。……例えどんな減らず口叩けたって、女だし。俺の彼女だし」
「……」
「それに、松永みたいな悪趣味な野郎が他にもいるかもしれねぇし」



