ジュリエットに愛の花束を。



「気をつけて帰ってね」

「ああ、じゃあな」


樹の車から降りて、角を曲がると……門の前に立つ、お兄ちゃんの姿が目に映った。


「……まさか、あたしを待ってるわけじゃないよね?」


顔をしかめながら聞くと、お兄ちゃんはあたしの顔を見下ろす。


「初日から門限を破るようだったらもっとキツく言う必要がありそうだからな。見張ってたんだ」

「門限って22時でしょ? まだ時間前だし。時間過ぎたら見張ってればいいじゃん」

「おまえを送ってきた椎名が送り狼にでもなって、うちの家の前で何かされて噂にでもなったら迷惑だからな。

……ずいぶんうるさい車だな。この近所か?」

「とりあえず! 家入ろうよっ!」


樹の車のエンジン音に、冷や冷やしながらお兄ちゃんの背中を押す。

玄関にお兄ちゃんを押し込みながら、樹の車が遠ざかっていく音に意識を集中させる。


……いつもなら同じ部屋に帰ってたのに。

お兄ちゃんのばか。