「……お兄ちゃん」
「なんだ?」
「あたし、転んで傷ついたとしても、もう自分で立ち上がれるから大丈夫だよ。
いくつになったと思ってんの? 来年には、もう成人するんだから」
「……そうだな」
「それに……あたしは、間違った人になんかもう、捕まらないから」
「……」
頬を落ちる涙が、熱い。
だけど、そんなの気にしないで、お兄ちゃんの目を見つめる。
「確かに、今まで付き合ってきた人は、お兄ちゃんに反対されても仕方ない人達だった。
あたし自身、好きで付き合ってたわけじゃないし……お兄ちゃんに心配して欲しいって気持ちからそうしてただけだった。
だから、お兄ちゃんが心配してくれる気持ちも分かる。
……でも、樹は違う。
今までの人達と、樹は違う……。それは、分かって。
お兄ちゃんが、真人くんの事を運命だって言うなら……あたしだってそう思う。
2年前、真人くんがお兄ちゃん達のところにきてくれたから、……だから、家出して樹に逢えた。
確かに、お兄ちゃんが好きだった……。
けど……今は、その時のお兄ちゃんへの気持ちなんか比べ物にならないくらいに、樹が……」
「好きなの……」最後は、恥ずかしくなって本当に小さな声で言った。



