「……ロマンはさー、男が見てればいいよね。女には無理ー」
なんて、机に突っ伏した皐を横目に呆れて笑った時、教室のドアが勢いよく開いた。
そして、教室中からの視線を集めて入ってきた松永が、あたしと皐の前に仁王立ちする。
「瑞希っ、見ろよ、コレ!! 幻のメープルプリン!!」
「あ……ホントだ」
「ぁああっ!! ホントだ……松永、男だね……」
毎日ばっちり決めている短髪を少し乱してまでゲットしたプリンを、松永が誇らしく、印籠みたいに見せ付ける。
そんな松永に、教室内からまばらな拍手が送られる。
微妙な拍手にプリンを持った片手をかざしてから、松永はそのプリンをあたしの前に置いた。
「瑞希にやるよ」
「は? ……なんで?」
「だって、女ってプリンが好きだろ?」
……その固定概念はどうかとも思うけど。
まぁ、嫌いって言う人は少ないかもしれないけど。
「なんであたし?」
「なんでって……だって、こないだやった時だって喜んでたし」
「あー、そうだ。アレね、樹が食べてた。
あ、違った。捨てようとして、でも魅力に負けて食べてた」



