「あたしの気持ちなんて……、気にしなくてよかったのに……っ。
あたしが勝手にお兄ちゃんを好きだっただけだよ? その気持ちに応えられなかったからって、お兄ちゃんが謝る必要なんか全然ないんだからっ。
それに……、里香さん達を放ってまで、あたしの事心配するなんて……お兄ちゃん、バカじゃないの?!
そんな事してる間に、里香さんに浮気されても知らないからっ!」
感情が暴走して、最後の方は言葉がめちゃくちゃだった。
伝えたい事はそんな事じゃないのに……いつも素直じゃない言葉ばかりを選んできたせいで、肝心な時に言葉が見つからない。
ついにこぼれた涙。
涙を落としたあたしに、お兄ちゃんは困り顔で微笑んだ。
「仕方ないだろ。……おまえの男を見る目がない事をよく知りすぎてるんだから。
おまえが変な男にハマってるなら、それを止めてやらないと……後で傷ついてるおまえを見たりしたら、また後悔しそうで嫌だったんだ。
小さい頃からよく転ぶ奴だったしな。その度に泣いて俺を呼んで……その泣き顔が、今も頭から離れないんだよ。
……おまえは、大事な妹だから」
「多分、俺もシスコンなんだろ」なんて軽く笑いながらも、優しい瞳であたしを見つめるお兄ちゃんに、もう涙を気にする事はなかった。



