それは、かなりの勇気だった。
甘ったるい雰囲気で、感情が昂ぶっていたりすればそれぐらい言えるかもしれないけど。
あたしは今アルコールも回ってなければ、シーンだって、こんな至って普通な感じだし。
後押ししてくれるキレイな夜景だとか、間接照明とかもない。
こんなタクシーの中で、しかも面と向かって。
だけど、少しでも樹の気持ちに応えたかったから。
こんなあたしを家族に紹介してくれて、将来まで考えてくれている樹を、あたしも大切にしたいと思ったから。
意を決して言ったあたしを見て、樹は少しだけ驚いた表情を浮かべた後微笑んだ。
樹の笑顔を見た途端、恥ずかしさが一気に襲ってきて目を逸らす。
「そうだ。お兄ちゃんの会社の会長に誘われて断れなくて、って言えば見逃してくれるかな」
顔が赤くなったのを誤魔化したくて言うと、樹は苦笑いして首を捻った。



