「樹って、家の中でなんて呼ばれてたの?
やっぱり『おぼっちゃま』?」
「……」
「そっかー。で、今まで恵まれた環境で陸上やって上位とってたのに、ライバルが現れちゃったから嫌になっちゃったんだね。
それで世間知らずの樹は、麻衣ちゃんと……」
「その名前出すなよ。
……まぁ、打たれ弱かったのは認めるけど、それは今の俺には当てはまんないから」
「そっかそっかー。あたしのお陰でね」
あたしよりも一回り以上大きい身体してる樹が。
何でもあたしより優れてる樹が。
大学内でも一目置かれてる樹が。
デリケートで打たれ弱かったなんて。
大きな家の中で守られながら過ごしてきたなんて。
『おぼっちゃま』なんて。
可愛すぎて、ついに堪えきれなくなって笑い出す。



