いきなりの会長室。
っていうか、あたしみたいのが会長室とかって、この先絶対ありえないし。
会社のお金とか横領しない限り絶対にないし。
「ただのどこにでもいるじいさんだって」
黒い皮のソファに身体が勝手に沈みこむから、背筋を伸ばしてるのさえ大変なのに。
樹は自分の家みたいにくつろいで、放り出した足を組んでリラックスモード。
……なんか、樹のいっつも余裕あるところとか、キレイ好きなところとか、物怖じしないところとか。
いいとこの育ちだったからなんだな。
「そっかそっか。だから打たれ弱いのか。おぼっちゃまだから」
「あ?」
樹が陸上から逃げ出した理由がなんとなく可愛く感じてきて、あたしの中から緊張が逃げていく。
顔をしかめた樹を見ながら笑いを堪える。



