抱き締める樹の腕に力がこもる。
ぎゅっと抱き締める樹が、低い声をあたしの耳に注ぎ込んだ。
「俺……、瑞希と離れるなんて、考えられないから」
きっと嬉しいハズの言葉が、なぜか重たく胸の中に滞る。
やっぱり……、そんな気持ちが浮かぶ。
樹が断ったのは、やっぱり……あたしが原因だったんだって。
「無理だろ。どう考えたって。
……よく考えたよ。一生問題だし。
だけど……、やっぱりおまえを置いていくなんて考えられない。
おまえが……、人一倍、寂しがりやだって知ってるから。
お兄さんが家を出て、その寂しさに耐え切れなくなって俺んとこに来たのに、俺まで離れてくなんて……。
瑞希にそんな思い、させたくない」
「……樹、」
「それに、俺も無理だし。
……無理だろ。離れるなんて。普通に考えられねぇよ」
呆れたように笑った樹の吐息が、頬にあたる。
樹の腕をぎゅっと抱き締め返したい衝動を必死に抑え込んで、息を大きく吸い込んだ。
そして。



