樹は、何も答えなかった。
きっと、答えられなかったんだと思う。
あたしが言ったことが図星だったから。
考えてみれば、今までの樹の行動は少しおかしかった。
少しだけおかしいなって部分が、たくさんあった。
それを特に気にかけてこなかったけど……。
今、初めてそれが一つにつながった。
小さなサインの元が、一つに。
『瑞希を置いて、なんて……やっぱ、考えられねぇし』
あの時の、少し掠れた言葉は……、自分の気持ちを決断を正しかったんだって思い込もうとしてたんだ。
校内で、無理矢理あたしに触れた時。
あれは、きっと樹の不安の表れだった。
自分が『MSC』の事で不安になってる時に、あたしが変な態度取ったりしたから。
色々重なって、それでだ。
わざわざ電話するためにうちに来てたのだって。
一人でいると、つい考えちゃうから。
全部が、樹の不安が形になったモノ。



