知らなかった事実にびっくりして、短い返事をすることしかできない。
『MSC』って大きい会社だし、そこだったらきっと陸上だって続けられるのに……。
なんで樹は蹴ったりしたんだろう。
不思議に思っているあたしに、松永が続ける。
「俺が椎名先輩に入れ込んでるのは、親父も知ってたから。
別に裏入社ってわけじゃなくて、ちゃんとした正規の手続きで誘った。
こんな時期だし、椎名先輩も喜んで受けてくれると思ってたんだ。
自分で身内の事褒めるのもおかしいけど、親父の会社は今の不景気時代でもちゃんと利益出してるし。
入社すれば、陸上も続けられるし。
……でも、椎名先輩は、断った」
「……理由は?」
松永は、少し言いにくそうに眉を寄せてからあたしをじっと見た。



