「でも、昨日は普通に言いそうになってたじゃん」
「そうだけどさー……。思い直したんだよ」
「いいから、教えてよ。あたしの希望は、樹の希望でもあるんだから。
あたしがいなければ、樹は陸上に戻らなかったって言ってたじゃん」
強引に言うと、松永がぐっと言葉を呑む。
そして、黙って苦悩してから、諦めたようにあたしを見た。
そういう顔されると、本当にいじめてるみたいだからやめて欲しい。
そんな事を思っていた時、気まずそうに顔を歪めた松永が口を割った。
「椎名先輩……うちの会社の内定、蹴ったんだよ」
「え、『MSC』の? っていうか、樹、『MSC』の就職試験受けてたの?」
「いや。……どっちかって言えば、うちから誘ったんだよ。推薦って感じで。
うちの会社、陸上にかなり力入れてるし、それで……うちの大学陸上部のトップ2を欲しがってたんだ」
「……へぇ」



