「ちょっと聞きたいんだけど、昨日、何か言いかけてたでしょ?
なんか、会社名出して。
あれ、なにを言おうとしてたの?」
普通に聞いただけなのに、松永はびくっと肩を揺らして分かりやすく動揺を示した。
目をそらして、そわそわして……。
落ち着かない様子で、視線を地面に落とす。
「えっと……、別にたいした事じゃないし」
「でも、アリサさんがすごい勢いで止めてたし。樹も……なんか、おかしかったし」
「いや、でも、俺の口から言うのはちょっと……」
「なんで? アリサさんに怒られるから?」
「それもあるけど……、その、椎名先輩も怒るだろうし。
俺、本当に憧れてるから嫌われたくないし」
本当に困ってる様子の松永に眉をひそめる。
樹に嫌われたくないって、言ったら嫌われるような事なのかな。
そういう微妙なヒントとか聞くと、ますます気になる。



