「松永、ちょっといい?」
「あ、ああ……」
あたしの声を聞いた松永は、びっくりした顔をして見上げて。
申し訳なさそうに表情を崩した後、立ち上がった。
教室を出て向かったのは、いつか松永が『不釣り合い』発言をした場所。
こないだと同じベンチの前で立ち止まって振り向くと、松永はギクリと身体を揺らす。
……あたしがいじめようとしてるとでも思ってるのかな。
「……別に昨日の事で責めるつもりとかじゃないから」
一応そうは言ってみたけど、松永の緊張が解ける様子はなかった。
帰った後、相当アリサさんに怒られたのかな。
……樹も結構『ただじゃすまさねぇ』くらいの発言してたし、萎縮するのも無理はないか。
微妙な空気を冷たくする風が、2人の髪を揺らす。



