「あ、椎名くん。ちょっと瑞希さん借りるから」
「借りるって言われても、俺のが先約なんだけど」
「でもあたしの方が重要だと思うけど。
なんたってこの瑞希さんを悩ませてたことなんだから」
アリサさんがそこまで言うと、樹の視線があたしに向けられる。
頷くのもおかしい気がして黙っていると、あたしの態度から何かを察したのか、樹は小さなため息を落とす。
「わかった。けど俺も同席させてもらうから」
「別にいいわよ。ほら、タケルっ、ちゃんと歩いて!」
「いってぇ……っ、分かったから髪引っ張るなって!」
注目を浴びるほど賑やかな姉弟の後ろを、少し距離を空けて歩く。
「なんかアリサ、態度違くねぇ?」
途中、2人を眺めていた樹が小声で話しかけてくる。
「あ、うん。なんか女の子らしく演じてたんだって」
「やっぱりな。なんか嘘っぽかったんだよな、ずっと」



