「なぁ、瑞希」

「ん?」

「瑞希は……今、……」


……~♪

そこで、お兄ちゃんのケータイが鳴り始めた。

スーツのポケットからケータイを取り出したお兄ちゃんは、席を立って電話に出る。


「……はい。片桐です。……おはようございます」


相手は、話し方からして会社の人。

部屋を出て行ったお兄ちゃんをあまり気にも留めずにご飯を食べて、箸を置いた時。

電話を終えたお兄ちゃんがリビングに戻ってきた。


「悪いけど、仕事行くな。急ぎの仕事が入ったみたいで……食器、帰ってきたら洗うからそのままにしといていいからな」

「ああ、いいよ。あたしまだ時間あるし、洗っとく。気をつけてね」


お兄ちゃんは、柔らかく微笑んでから急いで支度をして家を出て行った。

テーブルの上を片付けて、一人で食器を洗っている時、ふとお兄ちゃんがさっき言い出した言葉が頭をよぎる。