「……これ、アリサさんの?」

「そうだけど」

「これって……RX7?」

「そう。よく知ってたわね。好きなの? スポーツカー」

「樹が好きで……今乗ってる車の次に、これが好きだって散々、もううっとうしいくらいに聞かされて見せられてたんで、これだけは覚えちゃったんです」


そう言いながら助手席に乗り込むと、アリサさんは小さく笑う。


「車が好きで、しかも熱く語るなんて……やっぱり意外。

椎名くんには、瑞希さんにしか見せない顔がたくさんあるのね」

「……あたしが騒がしいからですよ、きっと。ついいらない事まで話しちゃうだけじゃないですか」


アリサさんがエンジンをかけると、樹の音に負けないくらいのエンジン音が暗い空に響いた。

……この時間に、この音は大丈夫なのかな。


ちょっと不安になりながら窓の外を眺めていると、車がゆっくりと走り出す。

意外にも安全運転なアリサさんにほっとしながら道順を説明し終えると、アリサさんが思い出したように言う。