「へぇ。……その上司、いくつも修羅場乗り越えてるのかな。体験談?」
「いや、でも確かに去年くらい職場内でもめてたな。
パート社員と関係持ってたらしくて、それが誰かのたれ込みで奥さんにバレて……って、今はそんな事話してるんじゃないだろ!
おまえの話だ」
いつものごとく流れていった話題を、元に戻される。
いっそのこと遠くまで流して忘れないかなって思ってたのに。
「大体、椎名はそのこと知ってんのか?」
「……言ってない。会ってもないし」
「会ってもないって……ケンカか?」
「……違う。樹、今陸上が大変だから」
「おまえがあんなに思い悩んでた時に陸上か?」
ケンカを売ってるような言葉に、あたしはキっとお兄ちゃんを睨む。



