「ただいま」
家に帰って林檎をむいていた時、玄関から声がした。
お兄ちゃんはあたしがキッチンに立っているのを見ると、ネクタイを緩めながらあたしの手元を覗き込む。
「今日の夕飯何?」
「ビーフシチューとパンとサラダ」
「久しぶりだなー、瑞希のビーフシチュー。
おまえ、気は長くないのに、料理に関しては時間かけるから煮込まれてて上手いんだよな」
「……と、林檎」
付け足したメニューに、お兄ちゃんはにこっと笑う。
「ああ、里香からメールが入ってた。去年も親戚の人からもらったんだけど、蜜が入ってて上手かったんだよな。
食後に食べるか」
お兄ちゃんが思い残してる事ってなんなんだろう。
そんなに大事な事?
里香さんと真人くんを放っておくほどに?



