クスっと笑う里香さんに、あたしはずっと気になっていた事を口にする。
里香さんの本音を聞きたくて。
「お兄ちゃんに、文句言ったりしないんですか?」
里香さんは少し驚いた表情をしてから、それを柔らかい微笑みに変えた。
「実家に帰ってる事?
……それなら、怒ったりしないよ。私が勧めた事だし」
「え……なんで?」
びっくりして聞き返すと、里香さんがにこりと笑う。
「達也ね、実家に思い残してきた事があるのに、ずっとあたしと真人を一番に考えてきてくれたの。
優しい人だから、自分の気持ちで行動する事ができなかったのね、きっと。
でもね、あたしは……達也と結婚して真人を授かれて、今、一つも後悔してないの。
それなのに、達也が同じ気持ちでいてくれないのは嫌じゃない。
達也にも、後悔を残したままでいて欲しくないから、あたしに協力できる事であれば手伝ってあげたいから。
だから、「ちゃんとやり残した事をしてきて」って、伝えたの」
「……」



