「……あ」
「え、なに?」
思わず声をもらすと、皐が勢いよくあたしを振り返る。
皐の視線を受けながら……恐る恐る、思い当たった事を声にした。
「松永……樹を狙ってる、とか?」
少しの間、教室を静けさが包んだ。
だけど、それは次の瞬間、皐の笑い声に変わる。
「ないないないっ! いっくら松永だって、そんな事ないって。
……あれ?」
「なに?」
「でもさ、確か、同高だった子がさ、
『松永って全然その手の噂なくってさー。一時期男が好きだって噂まであったんだよ』的な事言ってなかった……?」
「……言ってた気がする」
さー、っと血の気が引いていく。
まさか……そんな思いに2人で顔を見合わせて。
少ししてから首を振った。
「違う。違うよね、そんなわけない」
「うん……。違うといいね」
「違うといいね、じゃなくて、違う。絶対違うから」
頑なに否定していると、皐は軽く笑ってから答える。



