きっと、樹に触られたのが嫌だったわけじゃない。

いつもは、優しさでカバーしてある樹の不安を見たりしたから、びっくりしただけだ。

いつもは見ないような樹の感情に触れたから……、驚いただけ。


樹だって、不安になる。

そんな当たり前の事を、忘れてた。


嫉妬深い樹を誰よりも知ってたのに。

なのに、それ以上にもらってる優しさに甘えて……。


樹の感情が溢れ出すまで、誤魔化し続けるなんて。

どうかしてる。




……フェアな戦いなんかよりも、樹の気持ちを大事にするべきだったのかな。


そんな疑問を浮かべながら、コロッケパンを口に運ぶ。

飲み込むと違和感が走る首筋の絆創膏が、樹の不安を主張してるみたいで。


『『なんでもない』なんて、嘘、俺につくなよ』


樹の言葉に胸が詰まって、なかなか食べ終わらなかった。