「和美ちゃん、大丈夫?」


マサさんが、上着を持って後から店を出てきた。
私が困ったように見上げれば、つられて困った顔をする。


「詩子に逆らうのは無理だよ。でも今は感謝かな」

「え?」

「話ってなに?」

「え、えっと」



マサさんに促されて、『ショコラ』の前の道を二人で歩く。
風が寒くて吐き出す息は白い。
なのに心は熱くて、ほてってしまいそう。

ここまでお膳立てしてもらって、言えないなんて情けない真似は出来ない。
後で詩子さんの顔をまっすぐ見返す為にも、頑張りどころの様な気がする。

心臓はドキドキして、涙さえも浮かんできそうなんだけど。

頑張れ私。頑張らなくちゃ。

今度こそ。

後悔しない恋がしたい。