自分でも驚くほど必死だった。

徹にも、幸せになってほしい。
心から人を好きになれるようになってほしい。

偽善だと、人は言うかも知れない。
だけど、好きだった人が本気で人を好きになれなかったらやっぱり悲しいと思う。


「……わかったよ」


徹がほほ笑んだ。
まっすぐにこっちを見て。

それが嬉しくて、私も自然に笑えた。


「頑張れ、徹」

「和美もな」

「ありがとう」

「俺も」


手を握って、離す。
これで、本当のさよなら。

徹を好きになって良かった。
心からそう思えた。

大好きだった。
それを、後悔無く思い返せる。