私はそのケーキに口をつけることにした。
今となっては悲しい思い出になってしまったこの恋を、
食べきってしまうために。


「わ……」


ケーキの表面にかかっているココアパウダーが苦い。
だけどその下のスポンジは甘い。

甘くて苦い、だって。
そんなの、今の私にはちょっと辛いんじゃない?

口に入れた途端にそう思って、
そしたら喉元に再び涙がこみ上げてきた。


「……う…」


こんなところで、泣きたくなんかなかった。

一口一口、こみ上げてくるものと一緒にケーキを飲み込む。
味なんて、全然分からなかった。