ショコラ


「百面相」


こつん、とおでこを叩かれた。
顔をあげれば、お皿を拭いているマサさんがいる。


「マサさん」

「大丈夫だよ」

「え?」

「何かは分からないけど、大丈夫。いつか必ずうまくいくから」


その根拠のない断言は、不思議と力がある。
ざわついていた胸の内が、波が静まるように静かになっていく。

ああ、マサさんって。

胸が、ドキンとする。
さっきまでとは違う揺れで、胸の中がさざめいて行く。

マサさんって、……すごいなぁ。

何かゆるぎないようなものが、胸の奥にストンと落ちたみたい。


「うん」

「和美ちゃん?」

「私、頑張ります」


何をどう頑張れはいいのかなんてわからないけど。
その気力だけは湧いてきた。