「こんなにおいしいケーキを、これからずっと食べるたびにこんな風に思うなら」 こんな風に。 悲しい失恋を思い出すなら。 どうして自分では駄目なのかと、思い返すのなら。 この恋は私に、何ももたらさなかった。 「……そんなことないよ」 マサさんの優しい声が降ってくる。 ケーキのお皿を奪い取られて。 彼は私の肩を包むように左手を乗せた。 「なんで、君に声をかけたと思う」 マサさんの優しい声が耳元で囁く。